鯖缶と切り干し大根

ブログ"鯖缶と切り干し大根"を閉鎖しました

 レビー小体型認知症と診断され要介護1と判定された大隅敬子が、2019年6月11日に、検査結果を聞きに行った天使病院から、付き添いの制止にもかかわらず連れ去られ行方不明になりました。この経緯が、ブログ「鯖缶と切り干し大根」になりました。

 子供のいない彼女に「頼れるのは、あなたしかいないのだから」と言われ、一緒に暮らしていた私は、行方不明事件をツイッターで投稿しました。また、行方不明先の情報を得るために、大隅の年賀状相手とマンション住民に手紙を送りました。それらの中身は大隅が、施設に入りたくなかったこと、親族ではなく私の世話を望んでいたこと、また姪たちとの話し合いで大隅の世話を私が任されたことなどです。それらは、親族がメモしたノート、裁判に提出した音声データ(43件)などをもとに記載したもので、大隅が親族を信頼していなかった事由も含まれています。

 2019年11月14日、ツイッターと手紙が社会的評価を下げたという理由で、大隅の親族3人から名誉棄損賠償訴訟が起こされました。
 2020年3月25日、私は彼らを相手に、大隅の行方不明による精神的損害を理由に損害賠償訴訟を起こしました。2つの裁判は併合され、原告が親族、被告が私として進められて来ました。

 2021年4月14日、裁判長から「お互いに大隅さんのことを思ってされたことと思われるので話し合いはどうですか」と和解の提案がなされました。
 5月19日、和解の条件として私は、大隅の面会・外出の自由を求めました。親族は、名誉棄損に当たると指摘している4件のツイッターの削除を求めてきました。私はすぐ削除しました。
 ブログについても、「クレーム」がありました。ブログ「鯖缶と切り干し大根」には認知症の人を、本人の意思を無視して施設に入れることだけはやめて欲しいという願いを書きました。
 ブログは個人が特定されないよう考慮したつもりですが、当事者にとってはすぐ誰のことだかわかります。また、進行中の裁判のことを書くのは、考慮が足りないのではないかという指摘もされました。
 大隅に当たり前の暮らしが戻るなら、その可能性に少しでも近づけるならと思い、ブログ「鯖缶と切り干し大根」は閉鎖します。

認知症の人は自分で自分の人権を守れません。認知症の人の暮しは周りの人にかかっています。
2021/05/21  稲垣彰晴
2021/10/10 社会的評価を低下させると指摘され削除したツイッターと同じような表現は変えました。

追記 閉鎖したのに追記するのはおかしいのですが………  

* 2年余りの裁判は、2021年10月1日、和解という形で終了しました。
和解条項
 1 原告らは、被告に対し、被告が訴外大隅敬子と会うことを妨害しない。
 2 被告は、原告らに対し、令和3年10月8日までに、別紙の各①ないし⑦の各記事を削除し、かつ、その完了を連絡する。
 3 原告らと被告は、今後お互いに接触しないこと及び誹謗中傷をしないことを相互に約束する。
 4 原告ら及び被告は、その余の請求をそれぞれ放棄する。
 5 原告らと被告は、原告らと被告の間には、本件に関し、本件和解条項に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。
 6 訴訟費用は各自の負担とする。
 和解の合意条項2は、ツイッター7件の削除です。この7件は,原告が新たに削除を要求した19件のうち裁判長が「客観的に社会的評価を低下させる摘示である」と判断したもので、原告らが違法な行為等をしたと理解される表現がある投稿です。

 10月8日面会に行き、施設側から「今はコロナで面会はできません。大隅さんの面会は,後見人の星原直子弁護士から自分が許可するものだけを大隅さんと面会させるように指示されています」と説明されました。
 また、手紙は「一度ご親族が見て、手渡していいと判断したものを大隅さんに渡すようになっています。これは入居時に決められています」と言われました。

大隅敬子の人生の終盤に起きた記録として、閉鎖した「鯖缶と切り干し大根」はしばらくこのままにします。